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5.失われた色をさがして

失われた色を探して - 九汰
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 懐かしい夢を見た

 夕日に染まる丘の上 震える小さな背中

 あの頃のキミはいつも泣いていた気がする 
 
 霞がかる 色褪せた景色の中 キミが読んでくれた御伽の本も

 一緒にこいだ手作りのブランコも 全てが遠い昔のことのようだ・・・

    
 僕らの中で流れる時間の速さには とても大きな差があって
 
 その壁はどうあがいても超えることができないのだと

 僕に残された時間など限りなく0に等しいのだと  現実は告げる


 キミの心を取り戻す為に必要な鍵

 僕にはその鍵がどこにあるのかわからない

 
 あの丘はどこだっただろうか・・?

 少しずつ溢れてゆく 記憶の断片を 必死に繋ぎ合わせてゆく

 
 思い出せるのは 風に溶けた金木犀の香りと

 オルゴールが奏でる あの曲の音色・・

 
 幼い頃 毎日通っていた場所だ 辿りつけないはずがないと

 心の中の弱い自分を奮い立たせる

 
 薄汚れた白い身体  痛む前脚など気にも止めず

 朝から夜 夜から朝へ

 夕暮れ空には歌を歌い 止まることを忘れたかのように

 前へ 前へ ただひたすら走り続ける

 
 キミと約束を交わした場所

 失われた色をさがして


 

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