Far-off Voice
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7.三浦くんと咲本くん
-裏庭の花壇にて-
もうすぐコスモスの季節も終わりだなぁ・・・
枯れかけの花弁を指でなぞり、溜め息を吐く。
苦労して育てた花が咲いた時の喜びは一入だけど、どんな花もいつかは枯れる時が来るもので・・・
一生会えないわけじゃないって分かってるけど複雑な気持ちが拭えない。
・・・また来年会おうね。
僕はコスモスにそっと語りかけた。
「おいサキモトてめぇっ!!」
突然の怒号にビクリと肩が震える。
え・・・なに? ケンカ・・・・・・?
木陰に隠れ、そっと覗いてみると・・・
一人の男子生徒が複数の派手な不良?に囲まれているのが見えた。
”サキモト”って・・・
上履きの色から、囲んでいる不良たちは上級生みたいだ。
不良たちの背中に隠れてしまっていて、囲まれている男子の姿はチラチラとしか見えない。
どどどどどどどうしようっ・・・!!
僕が出て行っても何も出来ないし…っていうか状況が悪化する結末しか想像出来ないよ!
でも、放課後の裏庭なんて誰も来ないし・・・僕がどうにかして助けなきゃ!
一人あたふたしていると、不良のリーダーみたいな人が男子の胸ぐらを掴んだ。
その瞬間、男子の顔がはっきりと見えて僕は思わず声を上げそうになる。
やっぱり咲本くん・・・!!
胸ぐらを掴まれてもなお上級生を睨み続ける彼は、紛れも無くうちのクラスの咲本静夜くんだった。
クラスメイトだと知ってしまえば、尚更このまま見て見ぬふりなんて出来るわけがない。
でも、あんな恐そうな人達とやり合えるとも思えない・・・
不良さんは今にも咲本くんに殴りかかりそうな勢いだ。
まずい・・・まずいよ・・・・・・
こうなったら、イチかバチか…もうどうにでもなれ!!
「死ねっ!!」
「お、大釜先生!!こっちですっっ!!!!!!」
僕はその場で大声を上げた。
もちろん先生はいないし、呼んでもいない。
全身が強張っていた。手に汗が滲む。
「くそっ!誰だカマセン呼びやがったの!!出てこい!!」
逃げないの・・・っ!?
咲本くんを殴ろうとしていた不良さんはギラついた目で僕を探している。
「マジだったらカマセンはやべぇって!おい、行くぞ!!」
「くそがっ!覚えてろよ咲本!!次はぜってぇ潰す!」
仲間の不良さんのおかげで助かった・・・
不良さんはどこかで聞いたことのあるような捨て台詞を吐いて去っていった。
良かった・・・
一気に全身の緊張が解けてその場にへたり込む。
「おい」
ドスのきいた声に驚いて顔を上げると、目の前に咲本くんが仁王立ちしていた。
「はい…」
「弱ぇくせに余計なことすんな。」
お礼の言葉を期待していたわけじゃないけど、予想外の態度に唖然とする。
こわい・・・
何も言えないでいる僕に、咲本くんは舌打ちして去っていった。
余計なこと、かぁ・・・放っておいたほうが良かったのかな?
こわいし、迷惑みたいだからもう自分から関わるのはやめておこう。
日が暮れかけた帰り道。今日はワトソンに話すことが沢山だと思いながら家路を急いだ。