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​犬神憑き

​壱.相馬の護り神

 炉梦「俺を呼んだのはおまえか?…カガリ。」

カガリ「あぁ…久しいな情報屋。そうだ、私だ。
    すまないな…突然こんなところに呼びつけてしまって……」

 炉梦「いや、丁度仕事でこの辺の神社を飛び回ってたところだ。気にするな。」

カガリ「そうかそうか。」

 炉梦「…しかし、度々耳にはしていたが…おまえ、まだ神の真似事をしていたのか。」

カガリ「はは、ただの暇つぶしのつもりがな。」

 炉梦「さっさと手を引いて郷(さと)に帰ったほうがいいんじゃねーか?
    ここら一帯、前とは違う、よくねぇ気配を感じる…」


カガリ「私がおらねば、誰がこの社を底意地の悪い妖かしや堕神から守ろうか…。

    それに、今日そなたを呼びつけたのは他でもない、

    その気配についてなのだからな。」

 炉梦「なに…」

カガリ「情報屋。どうか、話を聞いて手を貸してはくれないだろうか?」



炉梦(ろむ)は、「しがない情報屋にはせいぜい橋渡しくらいが関の山だがな…」と、

溜め息を漏らしながらもドカッとその場にあぐらをかいた。

静かな境内の中、木々のざわめきがやけに騒がしい。

私は人の姿を形取り、ひとつ…大きく息を吐いた。

そして、手にしていた錫杖(しゃくじょう)を地に一突きすると、
幻術で作り上げた懐かしい風景が辺りを包みこんでゆく。


町はずれにある小さな森…

そう、全てはここから始まったんだ…

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