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​双子の神

​壱.忘れられゆくもの

 

「こうして忘れられてゆくのだと思うと…少し、寂しいものがあるな。」



夕陽に染められた石鳥居の上、隣に座る涼音がぽつりと呟いた。

僕はどう答えたら良いのか分からなくて、
赤い着物の袖から伸びた小さな手をそっと握ることしか出来なかった。

時が流れ、時代は四季を繰り返しながら移ろいでゆく。

人の子も、町も、行き急ぐように通りすぎて行き、
いつしかこの高台にある神社の存在も忘れられてしまった。

廃れた神社に神はいないと人は言う。
いたとしても、近づけば祟られると恐れ信じている。

僕たちはこの町が大好きで、ここから離れるつもりなんてないのに。
たとえ人々の信仰が薄れ、この力が尽きようとも…

握り返された右手から涼音の寂しさが伝わってくるようで
僕は寄り添うようにそっと肩を寄せた。



 

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