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​犬神憑き

陸.半妖の祓い屋

 炉梦「おせぇ…」

 影近「それはそれは、お待たせ致しました。

    炉梦さんの方からお声をかけてくださるなんて、明日は雨ですね。」

 炉梦「喧嘩売ってんのか?」

 影近「いいえ、とんでもない。喜んでいるのですよ?」

 炉梦「相変わらずいけ好かねぇ野郎だ…まあ、いい。
    カゲ、お前 最近この町で起きている人攫いについて調べていたよな?」

 影近「…ええ。それが何か?」

 炉梦「なら、丁度いい。紹介する…カガリ!」

(炉梦の手にしていた錫杖が輝き、白い法衣を身に纏った妖かしが姿を現す。)

カガリ「…この登場の仕方に意味はあったのか?」

 炉梦「…っるせえ!神っぽいだろ!」

カガリ「…あ、ああ。初めまして、千里影近(せんりかげちか)殿。
    私はカガリ。ここ、相馬神社で神を務めている者だ。」

 影近「初めまして、カガリさん。…妖かしが神の務め、ですか。
    僕も人のことは言えない口ですが…なんだかとても面白いことをされていますね。」

カガリ「ああ…面白いというのは初めて言われたが。
    そなたのことは話に聞いておる。半妖にも関わらず、祓い屋を生業にしている、と。」

 影近「ええ。祓い屋(仮)のようなものですけどね。
    …それで、人攫いの件ですよね?もしや僕に協力していただけるのですか?」

 炉梦「ばーか、その逆だ。」

 影近「逆、と言いますと?」

カガリ「人攫い…いや、人を喰ろうておる我が友人を止める加勢をして欲しい。」

 影近「…!」

 炉梦「めんどくせえが、一から説明してやる。

    時間がねえから一度しか言わねえ。耳かっぽじってよく聞けよ。」


目を見張る影近に、炉梦は手近な石段に腰をおろして話し始めた。

 

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