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​双子の神

​弐.廃れた神社の石鳥居



涼音「風鈴(ふうり)!見てくれ!はよう!」

風鈴「ん?どうしたんだい、涼音(すずね)そんなにはしゃいで。」

涼音「久しぶりに人が来たんだ!大福を置いて行ってくれた!」

風鈴「え!?だって、この神社はもう…」

涼音「私はそこの物陰から様子を窺っていたのだけどな、
          緑色の髪を横に結わえて着物を着た優しそうな男だったぞ!!」

風鈴「それって…」

涼音「また来ると言っていた!嬉しいなあ!
   私達もこれでまた神として町の人間を見守ることが出来るのだな!」

風鈴「そうだね。」

涼音「ん?どうした?風鈴…嬉しくないのか?」

風鈴「ん~ん、大福ちゃんとふたつあるね。石鳥居の上で食べよっか。」

涼音「うん!」



久しぶりに嬉しそうにはしゃぐ涼音の姿を前に、僕はただ、笑って誤魔化すしかなかった……



本当は大福を置いていった男は人間ではなくて
妖かしの中では有名な半妖の祓い屋であるということも、
もうすぐこの神社がなくなってしまうのかもしれないということも、

味のわからない大福とともに無理やり飲み込んだ。

小さな大福を大事そうに両手で持ち、
少しずつ食べる涼音は幸せそうで僕もつられて笑みを溢す。

涼音も、おそらく僕も…


人間と妖かしの区別もつかないほど弱っているのだということが
どうしようもなく寂しくて、やるせない気持ちになった。


 

鳥居の上から見る夕暮れはそれは美しくて
僕らの幸せを夜へと連れ去ってしまうようだった…

 

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